西武渋谷の死
私はニュースを文字通り全く見ないので、詳細はよく知らないが、西武渋谷がなくなるらしいと最近知った。
正確には、一部は継続、一部は営業終了ということだが、あの美しい建物などはどうなってしまうのだろうか。
渋谷というのは新宿など、他の副都心・繁華街とは違う、詩人の街である。それは詩人によって計画され、設計された、いわば一つの大きな劇場であり、パフォーマンスであり、プロジェクトなのだ。あの世界一の雑踏も、熱狂も、八十年代をいまだに匂わせているようなビルボード群も、すべては演出されたものであり、精密に仕掛けられた詩の隠喩のようなものだ。
熱狂とは詩だ。サド的な破壊は、醒めた視線で視られることによって、冷たいオブラートのようなものに包括され、薄青く透明な詩になる。
渋谷が詩人の街というのは、知らない人からすれば突飛な話に聴こえるかもしれないが、実際はそうではない、文字通り詩人の造った街なのである(知らない人は「辻井喬」で検索すると良い)。
西武渋谷というのは明らかに渋谷の中核的なシンボルの一つである。あれが失くなるとは……。
なくなった後どうなる? 本当になくなってもよいのか?
本屋で本を買い、高級服のフロアをビクビクしながら歩いたこと、渡り廊下の風景が想い出される。
国立競技場もあっさり失くなったので、西武渋谷の建物も失くなってしまうのか? と心配になる。
外苑の問題についてはよく知らないが、せめていままでの「外苑」を、昔の人が来ても想い出せるように、そこにあるたくさんの想い出を壊さないような形で、やってくれないだろうか(ロケ地になることも多いから、そういう意味でも景観は保たれていたほうがよい)。
少なくとも私の小説の中では「西武渋谷」は永遠にあるし、僕にとっては旧い方の「外苑」のままだ。
公開日:2026/05/04
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