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水の庭

第一楽章
「​破れ」
​I

​1.
伴野結月は伴野真早紀と花潟霞の息子。
二人は結月の小さな頃にとっくに離婚した。
伴野真早紀は売れない詩人。二人は日本のカトリック系の栄麗大学で出遭った。
真早紀は東京生まれ東京育ち、の帰国子女。東大法学部卒の外交官の息子だ。つまり結月の祖父は駐フランスの特命全権大使で、アルジェリアやフランス語圏の各国を回ったのち、日本の欧亜局に栄転し、という経歴の持ち主だ。
だが早死にで、定年を迎える前に死んだ。結月の祖父は剃刀のように頭の切れる切れ者ではあったが、途方も無い切れ者の宿命で、内臓のガンか何かで亡くなった。彼が亡くなった時には某ノーベル賞作家が弔辞を読んだ。彗星の如く閃光のように、生まれて生き死に、失くなった作家(彼は評論家・作家でもあった)であった。死後には膨大な草稿が残された。
そんな栄誉ある父の息子の真早紀は、とんでもない痴れ者だった。フランスの大使館のあるパリ八区で産まれた彼は、現地のスクールやインターナショナル・スクールを転々とし、育ったというのもあるのだが、精神が荒て、病んで、おかしくなっていた。

公開日:2026年5月15日

Author

天羽 柊
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