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​水の庭​

Prelude I​II​

3.
鞄を変えることはできない。しかし明らかに要求されている一日の教科書や参考書の類はこのちんけな革鞄の内容量を超えている。他の生徒はいったいどんなすまし顔でこの革鞄を持って生活しているのか? 学校に勉強道具を置いて帰ることは校則で禁止されているが、どのようにやりくりしているのだろう? 校門には生活指導の検問官が居り、身なりが少しでもなっていなかったらあげつらわれ、「やり直し」になる。靴下も革靴も指定されており、靴下が少しでも毛羽ついていたらすぐに検問官に指摘される。靴下などというものは使い棄てなのである。この学校に通う大部分の生徒は、洗濯ということを知らない。普通、着る物というのはクリーニングに出すか、知らない間に誰か家族ではない他の人がやっているのが普通なのである。革靴の手入れも怠ることはできない。型が崩れてはならないし、定期的に動物製の油を塗り、みすぼらしくはならないように。髪型にはルールがある。これといって文字にすることはできないが、「洗練された髪型」というルールである。清潔感があれば、禿でもいいが、清潔感がなければ禿では駄目なのである。小手先のことでは通用しない。
これら幾多のルールのなかで生活をやりくりするための答えは、伴野結月のように真っ向からルールをガン無視しているか、そのようなことは生活の隅々で当たり前なので、不可能ではないかのどちらかである。入る者を撰ぶ学校であり、中退者や留年者も少くない。
 

公開日:2026年5月9日

Author

天羽 柊
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